まどろむ夜のUFO

まどろむ夜のUFO (講談社文庫)

まどろむ夜のUFO (講談社文庫)

今年の直木賞作家・角田光代の96年に野間文芸新人賞を受賞した作品を読む。登場人物はフリーターや契約社員・社会に出る前の大学生であったり身分不安定でどことなしか大人になりきれない情緒不安定を抱えている。まじめに働いている人間がどこかおかしいとも感じる。こういった浮遊感の中で主人公たちが漂い、作者らしい文章表現が魂を明るい場所へ誘ってくれる。・・・「トンネルの中で交通情報を聞こうとするようにね。・・・・そして次に目を開けた瞬間、色が弾けたんです。僕らを包む緑はありとあらゆる色彩に変わり無限に広がり始めた、この世に存在するあらゆる色があの場所に集まってきたみたいな光景でした。」10年前の作品だが今の若者たちの心理を伝えているかもしれない。