6ステイン

福井晴敏の初短篇集「シックスステイン」を読む。

6ステイン

6ステイン

防衛庁情報局の工作員・狙撃手たちが密命を帯び、それを非情に遂行してゆく中で、組織と個の構図を描き出していくハードボイルドで面白く読んだ。
主人公には鍛えられた肉体がある。家庭や職業といった別の顔がある。
個人として「生きる」ために、どうしても拘らなければならない信念を胸に秘めて、身体を張る。何のために戦うのか?
ささいなきっかけやおよそ関係なさそうな導入シーンから核心に迫る人間の深淵に引き込む構成がうまい。
畳算って何だろう?という興味もそそる。「920を待ちながら」は中篇の心理ゲームで一番読み応えがある。どれもテレビや映画になりそうな映像が浮かんでくる。

収録作品:いまできる最善のこと/畳算/サクラ/媽媽/断ち切る/920を待ちながら